【「分担する」と「分業する」は違う!】

 近代経済学の父アダム・スミスの『国富論』は、分業についての本、といっても良いくらいの本です。

 分業をすることで、人は産業を発展させ、人々の働きを連結させ、高い生産性を発揮してきたのです。

 「単に仕事を分担すること」と「分業をすること」はどう違うのでしょうか。分担する、というのはあくまでも仕事を複数人でこなすということに過ぎません。しかし、分業のポイントは、仕事を分担した後、各々の仕事の特性を尖らせていくこと―――専門性にあります。

 意識的に、一つの仕事の腕を磨いていくことによって、スキルやノウハウを効率的に蓄積することができます。仕事の各要素において、効率化が図られることによって、仕事を処理する全体のシステムの効率性が上昇します。

 ここで、重要なことは、経営者が各要素の組み合わせを工夫して、調整を図ることです。各人が自分の担当業務について能率を高めつつ、全体的な調整が行われることで、会社としての生産性が高くなるわけです。

 ただ、仕事を分担するだけでは、仕事の生産性は大して上がらず、従業員の能力も巧く形成されません。各人が期待されている役割を意識的に果たし、業務に必要なスキルやノウハウを意識的に学習することで、分業のアドバンテージを十分に活用することができるのです。