【資本の論理を超える経営】
商売について、最もドライな見方をすれば、会社・インフラという入れ物があり、そこに従業員がいて、お金があるから、仕事が継続します。
しかし、人はそうした冷徹な資本の論理だけに生きるものでしょうか。
先ほどの震災では、多くの建物や商業施設が潰れました。たとえば、津波のせいで、いくつもの旅館が、商売をするための建物自体が失われるという痛ましい状態に置かれることがありました。上記のようなドライな考え方をすれば、仕事は継続できる状況ではありません。商売のためのインフラが失われてしまったからです。
しかし、建て替えや大規模修繕で再生するケースがあります(もちろん、できないケースもあります)。ここで、重要なのは、建て替えや修繕をする資金が決定的な要因ではないということです。
事業が継続していない間も、顧客が離れなかった、ということももちろんそうですが、仕事がない間も、その旅館のスタッフ、そして各種の取引先が離れなかった、ということなのです。つまり、入れ物がなくなり、将来にかけての財務的な不安があってもなお、その旅館を支えるネットワークが壊れなかったということです。
その旅館のサービスに対し、①顧客のみならず、スタッフや取引先もファンになっているかどうか、②ネットワーク全体が協力して、サービスを提供しているという意識があったかどうか、これが決定的なポイントではないでしょうか。
資本の論理を超える事業継続を可能にする経営とは、信頼と協力が織りなすネットワークを育て上げた結果としてなしえるものなのです。