【2つ以上の人の欲求に突き刺さる商品】

 人間には複数の欲求があると言われています。たとえば、何かを食べたいという食欲から、誰かに認められたいというような承認欲求、そして、自分の理想を実現させたいという自己実現欲求まで、様々な欲求があります。

 こうした複数の欲求が、本能をどう満たすか、という低次元の欲求から、自己実現する、というような高次元の欲求まで段階的に位置しており、満たされるに従って、高次元の欲求に向かうというのがマズローの欲求段階説です。

 さて、ビジネスにおいて重要なのは、まず様々な欲求があるということです。そして、本能に近い欲求と社会的な欲求があるということです。

 商品を開発する時には、この二つの方向の欲求を対象にしましょう。たとえば、アップルのiPodは、「音楽を聞きたい」という比較的本能的な欲求と、「カッコいいデザインの商品を持ちたい」「みんなが持っている商品を持ちたい」というような欲求を同時にかなえます。

 現代は豊かな時代と言われており、表面的には、モノが満たされているように見えます。ですから、後者の高次の欲求について考える必要があると強調されます。しかし、同時に、私たちは本能を持った生き物です。たとえ、食べログに掲載されていて、見た目もおいしそうなラーメン店があっても、おなかが減っていなければ行かないわけです。

 本能に刺さらなければ、マーケットサイズが確保できません。一方で、十分な市場があっても、高次の欲求に刺さらない商品では、消費者の心にまで響かないのです。